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ニッセイ基礎研究所『2012年における戸建注文住宅の動向を発表』


ニッセイ基礎研究所は、このたび2012年における戸建注文住宅の動向~シニア層の建て替え増加が意味すること~を発表した。

「戸建注文住宅の顧客実態調査」は2000年から毎年、主として一般社団法人住宅生産団体連合会 法人会員企業や関連団体を対象に、前年に成約した新築物件を各企業において無作為抽出し、営業担当者が調査票に記入する方法で実施している。2012年の有効回答数は4,502件であった。

2011年の動向を紹介した昨年のレポートでは、建て替えが5年ぶりに増加し、建て替えの世帯主年齢が比較的高く、一人あたりの建築費単価が高いことを指摘したうえで、その背景には、東日本大震災によって、住まいの耐震性に関心が高まり、特に高齢層が、築年数の古い住宅をより質の高い住宅に建て替えており、ニッセイ基礎研究所では、この傾向は2012年も続くのではないかと予測した。

【調査結果の特徴】
●世帯主の平均年齢が上昇、世帯年収は低下
平均世帯主年齢は前年より約1歳高くなり42.1歳である。世帯年収は、前年から7万円低下し810万円である。

●従前の住宅は、持家戸建が増加
従前の住宅種類では、前年に増加に転じた「持家戸建」の割合がさらに増加した。反対に「賃貸住宅」は若干減少している。

●建て替えが増加、一次取得層が減少
新築の方法では、前年増加に転じた「建て替え」の割合がさらに増加し、「新たに土地を購入して、新築」がさらに低下した。また、一次取得層の割合は、前年より3.3ポイント低下した。以上のように、昨年予測したとおり2012年も建て替え世帯が増加した。それに加えて、世帯主年齢が高くなった点に特徴がある。

【建て替え層の特徴】
●世帯主年齢60歳以上の建て替えが増加
世帯主年齢の全体平均値が1歳ほど伸びたが、年齢別構成比の推移をみると、60歳代、70歳代が2011年に引き続き増加している。一方、取得層の主流を成している30歳代が昨年度より低下している。30代が低下し、60代以上が増加したことで、世帯主年齢の平均値を押し上げた。

●建て替え層の主な建築動機は従前住宅の古さと耐震性の低さ
2011年の調査結果を踏まえて、2012年では建築動機を問う設問に、「耐震性の低さ」の選択肢を加えた。その結果建て替えでは、「耐震性の低さ」が35.8%と「従前住宅の古さ」の63.7%に次いで高くなっている。

●新耐震基準以前に建築された住宅の建て替えが促進
2011年の調査結果では、建て替え世帯の従前住宅平均築年数が36.4年で、前年より2年ほど伸び、対前年伸び率としては調査開始以来最高水準を記録した。2012年は引き続き36.4年となっている。築年数区分別の構成比をみると、築35~40年未満が17.6%、築40年以上が33.1%で、合わせて築35年以上が50.7%であり、調査開始から初めて過半を超えた。このことから、1981年の新耐震基準以前に建築された住宅の建て替えが進んでいることが分かる。前年に引き続き、耐震性の低い住宅ストックの更新に、シニア層の建て替えが貢献していると言える。

●現在の建て替え増加の意味
建て替えは、土地代を必要としない分、新築土地購入などに比べて少ない資金で新築することができる。にもかかわらず建築費を比較すると建て替えの方が高く、その傾向に圏域での違いはない。それだけ質の高い住宅に建て替えていると言える。さらに、2009年以降、建て替えにおいても認定長期優良住宅が6割以上を占める割合で推移している。長期優良住宅は、数世代にわたって住宅の構造躯体が使用できる劣化対策が施されており、少なくとも100年の使用に耐えると言われている。100年もの長期にわたって個人の資産となる住宅は、もはや社会資産と言え、個人の建て替えが、社会資産の形成に寄与している。このように、震災をきっかけにした建て替えの増加は、耐震性能に劣る住宅の更新にとどまらない重要な意味を持つ。


詳細リンク先
http://www.nli-research.co.jp/report/nlri_report/2013/report131016.pdf